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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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学校経営・ガバナンス

マネジメント力の徹底強化で自立を期す (京都大学副学長・理事 本間 政雄)

京都大学副学長・理事 本間 政雄
聞き手 ◎ 学生情報センター 副社長 西尾 謙

国の庇護のもとにあった国立大学も、昨年の法人化により、自らの知恵と努力で厳しい自由競争の中を生き残ってゆかなければならなくなった。今、まさに国立大学は大きな岐路に立たされている。

すべての国立大学が、経営のための組織構築、人材育成、財務改善等、数多くの取り組むべき課題を抱えている。しかもそれらの課題をいかに早急に解決し、さらなる成果をあげてゆくか――厳しい競争社会は、時間の猶予など与えてくれない。文部科学省が求める効率化係数の達成も年々厳しさを増す。

時代の流れに即応し、適時適切な経営判断を下し、自立した歩みが強く求められているのである。
京都大学の経営の健全化に取り組むとともに、職員の育成も視野に入れて国立大学マネジメント研究会を立ち上げた本間氏にお話を伺った。

マネジメントの不在

――――国立大学が法人化されて1年半が経ちました。まずは国立大学が抱える問題について率直にお聞かせください。

本間副学長(以下敬称略)法人化の取組みの中で私が危機的に感じているのは、何より経営の中枢であるべき組織が十分に機能していないことです。例えば、現在国立大学には経営トップである学長を補佐するために、全体で400人ほどの理事がいます。しかし、そのおよそ3分の2は自学出身の教員であり、専門外の人が財務等の担当になるケースもみられます。

また、その教員も任期がたいてい2〜3年ですから、マネジメントに100パーセントエネルギーを投入しようと思っている人は少ない。学長ですら選挙で選ばれ、3年なら3年だけ、にわか経営者になるのです。これでは、長期的ビジョンに立った経営などできません。そもそも経営トップである学長の選任は、専門の学識よりむしろ経営能力の観点から選ばれるべきなのですが、実際にはそうなっていません。

――では、現状はどうであると?

本間) 全国の学長は、皆さん立派な研究者や学者であり、これまでの研究実績等を評価されて選ばれた方が多いと思います。中には、学部長などを経験された、とりまとめ能力のある方が選ばれるケースもありますが、この「とりまとめる」という能力は意見を聞いて落としどころを見つける、言わば調整能力。しかし、これからの大学経営は、調整能力さえあれば通用するような生やさしいものではありません。そう考えると、大学の将来について暗澹たる思いがこみ上げるのです。

――経営の主要素は「ヒト、モノ、カネ」と言われます。中でも「ヒト」が最重要課題ですが、人材育成についてどうお考えですか?

本間) 実際のところ、事務方の現場職員の意識は未だ低いと言わざるを得ません。指示された日常的な事務をこなすだけであって、自分たちが大学を支えるとか、教員と連携して何かを変えようという発想がないのです。教員側も諦めており、マネジメントについて彼らを頼ろうとはしません。そうした現状を毎日見るにつけ、「これではいけない。事務職員の力を高め、教員が今行っているマネジメント的な業務を、事務職員がもっと高い専門性をもって支えてゆけるようにする必要がある」と感じています。
さらに、学生支援や教育に関しても事務職員の知識や見識を向上させ、教員の負担を減らし、いずれはアメリカの大学のように教員が教育研究に専念できるようにしなければならないと思っています。

喫緊の経営課題と対策

――国立大学が取り組むべき経営課題は多岐にわたりますが、中でも喫緊の課題とは?

本間) 何より予算や資源が縮小する中で、限られた資源を大学としての重点分野に集中して投資し、いかに教育・研究機能を充実させるかが最も重要だと思います。現在、経営の効率化を前提に、年間に1パーセントずつ運営経費が削減されていますが、その一方で大学の研究・医療活動は大型化、高度化し続けており、その他にも情報化、国際交流への対応、施設の老朽化対策など必要経費は増えるばかりです。

どこの大学も、いかに限られた資源を戦略的に配分するかが死活問題になってゆくことは間違いありません。さらに言えば、私は現段階で1パーセントの効率化係数が、来年度から倍になると予測しています。そうなれば、より大きな改革を迫られます。
例えば職員全員の給料を数パーセント下げれば、新たな経営資源が生まれます。これなど、私は有効策だと思いますが、組合との関係や手続き等の対処といった、より厳しい経営判断が求められることは必至でしょう。

――状況によってはこれまでになく厳しい経営判断が必要である一方、すぐに着手すべき対策というと?

本間) 私は3つの方法があると考えています。1つは、1人ひとりの生産性を高める。例えば、これまで10の仕事をしていた人が11の仕事をする。生産性が10パーセント上がれば、職員の数が10パーセント減ってもやってゆくことができます。当然ながら、無駄な仕事の削減や事務処理規則の簡素化など、民間企業並みの合理化と改善にも着手する必要があります。

2つ目は、意思決定のスピードアップです。例えば事務組織には係員、主任、係長、補佐、課長、部長がいます。法人化後、理事が加わったため、全七段階でそれぞれ意志決定をしなければなりません。これでは決定に時間がかかるばかりか、責任の所在がぼやけてしまう。こうした体制を見直さなければ、組織の機動力は向上しません。

3つ目は、職員を適切に配置すること。国立大学はそもそも官僚組織であったため、ともすると一旦得たポストは絶対に放さないという意識になりがちです。
その悪習を捨て、どこにどんな人を配置すべきかを柔軟に検討するとともに、適材適所を実現しなければなりません。

国立大学という組織の中には、「ある日これがなくなっても困らない」という無駄な部分がまだまだあります。これを見直して改善するとともに、教員も自分たちのことを棚に上げるのではなく、自ら進んで改革に取り組んでこそ、自立した真の大学経営が実現できると思います。

国立大学マネジメント研究会の意義

――国立大学マネジメント研究会を発足、会長に就任されました。研究会の性格について、例えば国立大学協会との違いは何ですか?

本間) 法人化後、文部科学省は大学の運営についてはほとんど関与をしなくなりました。法人化した以上、それぞれの大学が抱える問題は、独力で解決していかなければならないというわけです。しかし、多くの経営資源を有する旧帝大は独力でやれるとしても、他の大学はそうはいきません。

そうした状況を考えると、今後も国立大学協会の力を一層高め、大学間の情報共有を支援するとともに、人材育成のための研修事業を強化する必要があります。ただ、国立大学協会の研修は幹部クラスの方を対象としており、現場の実務人材の育成は各大学に任せられています。当研究会を設立したのは、「上からの」研修だけでなく、職員1人ひとりの自発的な資質向上努力が重要と考えたからです。

また、法人化後、各大学がどういうことに取り組んでいるのか、実態が分かりにくくなっています。どこかの大学が合理化のために旅費規則を変えたとか、大手旅行会社と新たな取組みを行ったということを私たちは新聞等で初めて知ります。つまり、大学同士で情報がまったく共有されていない。

――情報を共有することにより、迅速な対応が可能になると。

本間) そういうことです。例えば、九州大学に優秀な財務部長がおられて旅費規則の見直しを行われましたが、その際には教員の説得1つをとってもいろいろな問題が起こったはずです。こうした本当は必要な情報は、なかなか手に入りません。ここに、マネジメント研究会設立の大きな狙いがあります。先行事例、革新事例、特にマネジメントに関するイノベーションで、ある大学が成功したのであれば、そうした事例は支障のない範囲で広く公開し共有すべきです。
当研究会では、そうした理由から情報共有媒体として月刊誌「国立大学マネジメント」を発刊し、会の重要な活動と位置づけています。

――研究会の今後の展望は?

本間) 会員は400名を数え、賛助会員も22社、1国立大学、1独立行政法人の計24となりました。事務職員もようやく雇うことができ、徐々に組織としての基盤ができつつあります。まずは緊要の課題として、月刊誌に徹底的に現場で役立つ実務についての情報を掲載し、内容のクオリティを高めなければならない。また、近い将来、研究会、交流会の立ち上げも考えています。

企業から法人化後の大学経営の課題等について情報がほしいという声を聞きますが、現状ではなかなか機会がない。そうした場を研究会、交流会を通じてつくってゆきたいと思います。
さらに具体的な目標としては、年内に50社500名、そして早い時期に1000名規模の組織を目指します。英国では、AUA(Association of University Administrators)という組織があり、約6000名の会員がいますが、ここではアドミニストレーターの検定試験を実施しています。

当研究会でも、会員数がある程度の規模に達したら、同様に検定試験の実施を検討したいと考えています。
日本のすべての国立大学が、内的・外的変化への対応を強く迫られています。まっとうな経営組織たるため、真に自立するためには、まさに今がマネジメント力強化の正念場。
それができない大学は、厳しい競争環境の中で脱落せざるをえなくなる
――そうした時代に、もう入っているのです。

本間 政雄 Masao Honma

1948年生まれ。名古屋大学法学部政治学科卒業後、71年に文部省入省。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)大学院(英国)での2年間の留学を経て83年、在仏大使館一等書記官に就任。89年から文部省の各局各長を歴任し、97年、横浜国立大学事務局長。99年、文部省大臣官房総務審議官(政策調整担当)。2001年、京都大学事務局長。法人化に伴い、04年4月から理事・副学長(総務・人事・広報担当)、05年10月から非常勤理事・副学長(事務改革担当)。04年に国立大学マネジメント研究会を立ち上げ、会長に就任。専門分野は行政学、高等教育論、欧米高等教育政策論。

大学改革提言誌「Nasic Release」第13号
記事の内容は第13号(2006年1月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第13号・記事一覧

学生、若者、日本人にロマンを! (首都大学東京学長 西澤 潤一)


クライシス・マネジメントと大学経営改革 (同志社大学長 八田 英二)


マネジメント力の徹底強化で自立を期す (京都大学副学長・理事 本間 政雄)


拝啓大学殿 〜国際基督教大学編〜 (国際基督教大学 教授 学務副学長)


知の源泉たる大学の使命と改革 (文部科学省 技術移転推進室長 伊藤学司)


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大学と企業の「知的資産」に「価値」を創造する (一般財団法人知的資産活用センター理事長 増永保夫)


大学のシーズに市場価値を (関西TLO株式会社)


大学改革トピックス
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