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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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学校経営・ガバナンス

企業人から見た大学経営 費用対効果を見極め、選択と集中を (広島大学 理事 清水敏行)

広島大学 理事
清水敏行

国立大学法人に「民間の知」を注入
広島大学は、現在、昨年9月に浅原利正学長が打ち出した「広島大学アクションプラン2007」に基づき、教育、研究、社会貢献、国際戦略、附属病院、附属学校、管理運営体制など、さまざまな面で積極的な改革に取り組んでいる。

アクションプランは、「未来社会に貢献し、発展を続ける大学」をつくりあげていくために、2011年までに遂行していく行動計画を具体的に記したものであり、理事および教職員全員が共通認識を持つために明文化されたものであるとも言える。

私は以前、広島銀行に勤めていたが、浅原学長から打診があり、「民間の目で財務を見てもらいたい」という意向を受けて、昨年5月、財務担当理事として本学で働くことになった。

浅原学長は常に積極的に外部の意見を取り入れている。本学の「経営協議会」は、年間五回ほど開催され、外部の有識者である学外委員との意見交換に多くの時間を割き、出された意見について、実施可能なものはすぐに対応し、それに対する検討結果も必ず報告するという姿勢を貫いている。

こうした環境の中で、私は国立大学法人の財務に携わるようになったわけだが、いざ中に入ってみると、財務の考え方や感覚が、民間とはかなり異なっており、最初は戸惑うことも多かった。

例えば、財務の指標となる「国立大学法人会計基準」に目を通したとき、収益を追求する民間企業と違って、「収益という概念そのものがない」ことにまず驚いた。

もちろん、教育、研究、社会貢献を本分とする国立大学が、営利を求める組織でないのは当然であるが、法人となった今、健全な経営基盤を構築するには、財務に関する民間企業の手法や考え方の導入も不可欠であり、私は双方をうまく融合させるために、力を尽くしていかなければならないと考えている。

財政改革の鍵は「選択と集中」

国立大学法人の財務の大前提として、収入のうち、「運営費交付金」が毎年一パーセントずつ減額されることが定められている。本学の場合、運営費交付金が収入全体の40数パーセントを占めていることから、大学を安定した状態で運営していくためには、非常に大きな課題としてのしかかっている。

当然ながら、収入がどういう状態であっても、教育、研究、社会貢献に関しては、これまで以上に充実させていかなければならず、後退は決して許されない。ということは、それ以外の部分で、いかに効率的に運営し、経費を節減していくかが急務となる。

ここで陥ってはならないのが、収入が減っているのに業務改革を行わず、従来あるすべての部署に「まんべんなく少なく配分する」ことである。これでは効果がないばかりか、業務そのものが後退していくのは必至であろう。

大切なのは、「費用対効果」をしっかりと見極めながら、資金配分の「選択と集中」を進めることである。
例えば職員の手を煩わせていた単純作業を、適宜アウトソーシングしていくことで、人員等を大幅に削減することができる。

また、そこで発生した余剰人員を、他の重要な部門に再配置したり、「アクションプラン」の重要課題に対しての陣容を充実させることが可能となる。

本学財務部では、こうした業務の効率化をすでに進めている。会計作業として大学全体で発生する「大量かつ反復的な業務」を、すべて財務部に集中し、作業そのものは基本的に派遣社員が担当する体制を構築した。

いわば「大学内アウトソーシング」とも言える手法であり、これによって、常勤職員は大量反復作業に追われることがなくなった。その分、職員は「企画・立案・評価・改善」といったクリエイティブな業務に専念でき、財務部としての機能を大きく向上させることに繋がった。

浅原学長の思いとして、常勤職員にはできるだけ企画・立案業務に力を入れてもらいたいという方針があり、まさにそれが具現化されつつあると言える。

その他、経費削減の方法として、業者との契約交渉において、単価の縮減に努力することも重要だ。例えば複数年で契約することによって、購入単価が下がれば、それだけ支出を抑えることができる。

また、細かいことのようだが、大量にコピーをとるときは、カラーではなく白黒にするとか、書類はできるだけA4の用紙一枚にまとめて作成するといった地道な取組みでも、大学全体で継続して行えば、やがては大きな節減効果に繋がる。

こうしたことも含めて、教職員全員のコストに対する意識を高め、無駄をなくしていくことが何よりも重要なのである。

外部資金の増加と事業性の向上

もちろん、支出の削減ばかりでなく、収入をいかに増やしていくかも考えていかなければならない。といっても、そもそも大学は収益を生む組織ではないため、実施できる方法はどうしても限られてしまうが、知恵をしぼって、多様な財源を確保していけるよう取り組んでいるところである。

本学の場合、授業料や附属病院の収入以外で、重要な位置を占めているのは、「受託研究等収入」と「寄付金収入」である。受託研究等収入については、近年順調に伸びており、それに伴って経常収益に対する外部資金比率も少しずつ高まってきた。

また、寄付金に関しては、新たに「広島大学基金」を創設し、本学の活動にご賛同いただける方々からいただいた寄付金を、各種事業に有効に配分する体制を確立している。

例えば、優秀でありながら経済的理由で大学進学が困難な者を支援していく「フェニックス奨学金」などに充てていくことが決まっており、今後の基金の本格運営に期待がかかっている。

また、資金の運用にも、少しずつ取り組みはじめている。今のところは短期間の運用だが、きめ細やかな資金管理を行い着実に収益をあげてきており、こうした努力は今後も継続していくつもりである。

この他、大学が持っている施設の貸し出しなど、国立大学法人としてできる範囲の「事業性向上」に向け工夫しているところである。

管理運営体制の抜本的改革

一連の財務改革だけにとどまらず、広島大学では、大規模な組織改革が進行している。本学には、学長と各理事で構成される「役員会」がある。

この役員会について、執行の最終決定は役員会が行うが、理事が所管する各部署についての責任は、理事が直接負うという体制につくりかえた。民間企業でいえば、取締役会のもとで業務を進めていくようなものである。

さらに本年の4月からは、職員が所属する「部」を廃止して、「グループ制」に移行し、従来の課長が「グループの長」を務めるようになった。グループの長には、課長時代よりも大きな権限を与えており、その分、責任が大きくなるが、「やりがい」もまた大きくなる。同時に、各グループの長は理事と直接つながり、理事はグループを直接統括・指揮する。

このように管理運営体制をシンプルにすることで、組織全体が動きやすくなり、業務の大幅な効率化が図られている。こうしたドラスティックな改革によって、広島大学は今、着実に進化しつつあるのである。

清水 敏行 Toshiyuki Shimizu

1949年生まれ。京都大学法学部を卒業後、株式会社広島銀行に入行。広島銀行にて、主計課長、融資企画課長、営業統括部副部長、銀山町支店長・大阪支店長、常任監査役を努め、2007年5月、広島大学の理事(財務担当)に就任。広島大学では、財務部の予算決算・契約(外部資金も含む)・経理(会計センター含む)・管財と、社会連携部の産学連携センター・地域連携センター(08年4月より社会連携から施設に担当変更)を担当し、現在に至る。

大学改革提言誌「Nasic Release」第17号
記事の内容は第17号(2008年6月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第17号・記事一覧

大学改革と教育の可能性 〜「持続可能性(サスティナビリティ)」の時代における大学の在り方〜 (独立行政法人  産業技術総合研究所  理事長 吉川弘之)


大学改革の現在と未来 新しい改革の潮流をつくる(文部科学省 高等教育局長 清水 潔)


大学改革の現在と未来 リスクを超えて進まねば成功には至らない (法政大学学事顧問 法政大学名誉教授 清成 忠男)


女性を生涯にわたって応援し続ける大学を目指して (昭和女子大学 学長 坂東 眞理子)


生徒本位の大改革―都立高校再生の歩み (東京都教育委員会 教育長 中村正彦)


企業人から見た大学経営 因習を打破し、改善と発展を(学校法人名城大学 理事長 大橋正昭)


企業人から見た大学経営 費用対効果を見極め、選択と集中を (広島大学 理事 清水敏行)


企業人から見た大学経営 学生のため、大学の将来の発展に繋がる組織改革を (筑波大学 理事・副学長 吉武 博通)


企業人から見た大学経営 財務施策を駆使し、発展に導く (早稲田大学 常任理事 小林 栄一郎)


レポート 第1回大阪大学・京都大学・神戸大学連携国際シンポジウム


学生情報センターグループ「教育環境創造」活動の軌跡