Nasic Release ナジックリリース | 教育界における注目テーマごとに、各界の有識者の方々のご意見・ご提言を掲載した提言誌

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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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学校経営・ガバナンス

企業人から見た大学経営 因習を打破し、改善と発展を(学校法人名城大学 理事長 大橋正昭)

今や多くの大学が、民間企業出身者を理事等に登用している。大学「運営」を「経営」へと転換していく中で、企業人の経験やスキルは、どのように活かせるのだろうか。

大橋正昭氏(名城大学理事長)には、企業経営者としての視点から話を伺った。銀行出身の清水敏行氏(広島大学理事)と小林栄一郎氏(早稲田大学常任理事)からは、経営の要としての財務戦略について、さらに、企業の組織改革に携わってきた吉武博通氏(筑波大学理事・副学長)からは、国立大学の業務・組織改革について話を聞くことができた。

因習を打破し、改善と発展を

学校法人名城大学
理事長 大橋正昭

大学全体で課題に取り組む姿勢を
私はトヨタ自動車株式会社に36年間勤務し、その後、愛知製鋼株式会社の取締役社長を経て取締役会長を務めていたとき、縁あって名城大学の非常勤の理事となり、2005年12月に理事長に就任した。

学校教育については本来門外漢ではあるが、大学の教育や運営等に関して、外部の人間でなければ気づけない問題もあるはずであり、そうした点を少しでも改善していければと理事長を引き受けた。

1926年に「名古屋高等理工科講習所」として開設された本学は、中部圏きっての規模を誇る総合大学に成長してきたわけだが、戦後の一時期、学内において創立者と教授会との対立が激化し、行政や経済界が間に入って解決にあたったことがあった。

もちろん争いは完全に収束しているが、そのときの名残りなのか、それとも大学には一般的にありがちな傾向なのか、「経営を担当する理事側と教育を担当する教員側の立場や考え方が、ある程度異なるのは仕方がない」と考える風潮があるように感じられた。

そして、時折「法人と教学」という言葉を用いて、経営側と教学側の立場の違いを表現していることを、私は理事を務めていたときから常に感じていた。

本学が今後さらなる発展を目指していくにあたって、外部から来た理事と教員が、互いに遠慮してコミュニケーションが取れない状態であってはいけない、組織全体がもっと一体となって皆で知恵を出し合い、力強く邁進しなければいけないと考えた私は、教員の人たちや事務職員との懇談会を重ね、コミュニケーションの重要性を訴え続けた。

その結果、学内の雰囲気は変化し、「法人と教学」という言葉自体、最近は使われなくなってきたようだ。
また、コミュニケーションを図るだけでなく、本学の中枢を担うメンバーがチームワークを深め、より一層進歩していけるよう、年に一回、「サミット」なる会合を開いている。

一泊二日の日程で、学部長クラスの教員や部長クラスの事務職員が参加し、外部から招いた講師に講演していただいたり、大学全体の課題について意見交換をしたり、本学の行動目標として策定している「MS―15」(Meijo―Strategy2015)という長期基本戦略について検証や見直しを行うなど、充実したスケジュールをこなしている。

こうした取組みにより、本学は徐々に風通しのよい組織へと生まれ変わりつつあると言えるだろう。ちなみに「MS―15」においては、「必要な人材の確保と育成」「教育の充実」「研究の充実」「学生・生徒支援体制の充実」「経営改革」といった八つの目標について具体的な内容を定めており、実現に向けて全学で取り組んでいる。

この他、私が理事長となってから、大学が抱える課題にどのように対処していくべきかを、より専門的に検討するため、理事長の諮問機関として「経営問題検討会」を発足させた。外部の理事に座長をお願いし、理事、卒業生評議員、教員、事務職員らが参加して、多方面からの意見を集約して大学改革に取り組もうとしている。

これまでは、大学の内部事情を詳しく知らないという理由で、外部の理事や評議員を務める有識者が、意見を述べるのを遠慮していた傾向があったが、皆で情報を共有し、議論を重ねて、こうした閉鎖性を打破していくことが大変重要と考えている。

大学の教職員にとっても、外部の有識者との触れ合いを通じて、視野が一層大きく広がることにつながるものと期待している。

理事会そのものも、従来は学外理事の人数のほうが多く、やはり学内の事情を知らないという理由で、なかなか力を発揮できずにいた。これについては、副学長を二人制にし、両者を理事に加え、学内のことをよく理解した理事が中心となり、外部理事の意見も取り入れて大学運営に当たるべきだとの考えからだ。

さらに私自身は、本学の附属高校へも頻繁に足を運んで、教職員との接点を多くつくっている。こちらでは「高校活性化方策検討会」を発足して議論を展開しており、具体的な行動目標が定まれば、本学の基本戦略である「MS―15」に盛り込むことも視野に入れている。

高校に関しても、教職員にマネジメント的発想をより強く持たせ附属高校の改革を進めることで、これまで以上に社会的評価を高め、大学ともいっそう連携を深めて、全体でレベルアップを図っていきたいと考えている。

事務手続きの改善が急務

一般企業から大学の中に入り、特に大きく異なると感じたのは、何らかの事柄が決定して実行に移されるまでの手続きの煩雑さである。

企業の場合、例えばトップが打ち出した方針は、すぐに全社員に行き渡って業務に反映されるようになるものだが、本学では、一枚の稟議書がたくさんの部署の責任者のチェックを経なければならず、理事長である私の手元に届くまでに非常に多くの印鑑が押され時間がかかっている。

一人の責任者のところに1日ずつ書類が留まっていたとすると、その提案が動き出すまでには、かなりの日数が費やされてしまう。

もちろん大きな組織であるため、ある程度時間を要するのはやむを得ないが、業務の内容によっては、もっとスピーディーに処理して1日でも早く実行に移したほうが、大学や高校にとって、あるいは学生や生徒たちにとって、よりよい結果をもたらす場合もあるはずである。

ケースバイケースとはいえ、業務の流れを簡素化し、「打てば響く組織」になっていくことも、これからの課題であると思う。

事務処理に関しては、もう一つ、職員の「多能工化」の必要性を感じている。例えばトヨタ自動車の工場の製造現場であれば、一人の作業者が複数の作業を行えるよう訓練されており、誰かがやむを得ず休んだとしても、他の作業者がその穴を埋めることができる。

ところが大学の場合、一つの業務をたった一人の職員が担当していて、他の職員ではその業務の進め方がまったく分からないというケースが度々見受けられる。

つまりその職員が休暇や出張だと、一つの業務が完全に停滞してしまうのである。職員一人ひとりが自分の仕事に責任を持つのも大切なことだが、やはり業務の性質や内容によっては、他の職員の代わりをすぐに務められるように、日頃からチームとして業務を遂行するようにするべきだろう。

特に近年はコンピュータを使ってさまざまなデータを処理しているのであるから、複数の職員が情報を共有するのは難しいことではない。これも、業務および組織の構造改革のテーマとして取り組んでいくつもりである。

人間性を育てることの重要性

本学に限ったことではなく、今の学校教育全体の問題として、いわゆる人間教育が不足し、学生が社会常識を身につける機会が少なくなってきたように思えてならない。

というのも、企業で新入社員を見ていたとき、皆とても素直で、言いつけたことはきちんと一通りこなすが、言われたこと以外やろうとしない人が多いことが、非常に気になっていた。

そのため、入社式のたびごとに、「与えられた仕事に対して、自分でしっかりと考えて、何か役に立つと思うことを一つ付け加えて結果を持って来るように心がけなさい」ということを盛んに話していた。

このような若者が増えたのは、教育機関において人間教育があまりなされておらず、教えられたことを素直に守ったり、偏差値の高い学校に合格することばかり評価する偏った教育姿勢に原因があるのではないだろうか。その結果、「言われたことだけやればいい。

余分なことをやっても叱られるだけだ」という意識が植えつけられ、自分から動かない「指示待ち人間」が多く育ってしまったものと考えられる。

理事長の立場で大学内部を見るようになって、やはり、学校教育のあり方にいくらか問題があるのがわかった。そもそも人間教育とは、特定の学科や科目で教えられるものではなく、教職員と学生との日常のさまざまな接点の中で教わったり、あるいは先生の背中を見て育っていくものであるはずだ。

ところが名城大学の場合、理系の学部においては、実験などで研究室に学生が出入りして、教員と学生との交流がそれなりに図られているが、文系の学部においては、教員と学生との人間関係がやや希薄であるように感じられる。

もちろん先生方は皆お忙しく、なかなか講義以外で学生と接触する時間をつくるのは難しいかもしれないが、学生たちが人間としてより大きく成長していくために、なんとか力を貸していただきたいと考えている。

具体的には、教員が学生に何らかの指示を与えて、それに対して学生が指示以上、期待以上の結果を出してきたとき、学生を心からほめると学生はおのずと、自ら積極的に考える姿勢が身につくのではないだろうか。

反対に、きちんと考えず、必要なことができない学生に対しては、上下関係や社会常識を教員がきちんと指導していくことが大切だ。

2008年1月、私は理事長に再任され、2012年1月まで二期目を務めることになった。
今後も本学の発展のために、企業での経験を最大限に生かしながら、教職員とともに一体となって力を尽くしていく所存である。

大橋 正昭 Masaaki Ohashi

愛知県出身。東北大学大学院工学研究科修士課程を修了した後、1957年にトヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車株式会社)に入社。同社の取締役、常務取締役、専務取締役を経て、92年に愛知製鋼株式会社の取締役副社長に就任。同社の取締役社長、取締役会長、相談役を経て、2006年に顧問となる。また、2000年から学校法人名城大学の理事を務め、05年12月に同理事長に就任し、現在に至る。財団法人豊田理化学研究所評議員、財団法人ファインセラミックスセンター顧問、東海商工会議所顧問、財団法人愛知県体育協会参与などを現任。02年に勲三等瑞宝章を授章。

大学改革提言誌「Nasic Release」第17号
記事の内容は第17号(2008年6月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第17号・記事一覧

大学改革と教育の可能性 〜「持続可能性(サスティナビリティ)」の時代における大学の在り方〜 (独立行政法人  産業技術総合研究所  理事長 吉川弘之)


大学改革の現在と未来 新しい改革の潮流をつくる(文部科学省 高等教育局長 清水 潔)


大学改革の現在と未来 リスクを超えて進まねば成功には至らない (法政大学学事顧問 法政大学名誉教授 清成 忠男)


女性を生涯にわたって応援し続ける大学を目指して (昭和女子大学 学長 坂東 眞理子)


生徒本位の大改革―都立高校再生の歩み (東京都教育委員会 教育長 中村正彦)


企業人から見た大学経営 因習を打破し、改善と発展を(学校法人名城大学 理事長 大橋正昭)


企業人から見た大学経営 費用対効果を見極め、選択と集中を (広島大学 理事 清水敏行)


企業人から見た大学経営 学生のため、大学の将来の発展に繋がる組織改革を (筑波大学 理事・副学長 吉武 博通)


企業人から見た大学経営 財務施策を駆使し、発展に導く (早稲田大学 常任理事 小林 栄一郎)


レポート 第1回大阪大学・京都大学・神戸大学連携国際シンポジウム


学生情報センターグループ「教育環境創造」活動の軌跡