Nasic Release ナジックリリース | 教育界における注目テーマごとに、各界の有識者の方々のご意見・ご提言を掲載した提言誌

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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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国際化・グローバル戦略

世界各国の有能な人材が集うことが「世界を担う知の拠点」である東京大学の使命 (東京大学理事・副学長 田中明彦)


東京大学理事・副学長 田中明彦

2009年4月から濱田純一新総長による新体制となった東京大学では、前総長体制から取り組んできた東京大学憲章に基づいた教育研究の国際化の推進に加え「世界を担う知の拠点」を目指す濱田新総長の方針として、グローバル30への取り組みを決めた。

濱田新体制の中で国際化を担当する田中理事・副学長に、東京大学が推進する国際化と、東京大学ならではのグローバル30の考え方についてお伺いした。

留学生拡大による国際化はタフな東大生づくりの一環

――まず、東京大学としてグローバル30をどのように受けとめているのか、またどのような意図・理由によりグローバル30に応募したのかについて、お聞かせください。

田中副学長(以下、敬称略)2009年4月から、小宮山宏前総長の任期満了に伴い、濱田純一総長が就任したわけですが、従来より取り組んでいた国際化を、さらに推進していこうと考えています。その取り組みの中で、さらに多くの東京大学で学ぶにふさわしい有能な人材を留学生として獲得するため、グローバル30を活用していきたいと考えています。

なぜ、外国人留学生を増やそうとしているかといえば、優秀な外国人留学生をさらに増やすことにより、世界の一流大学としての東京大学のポジションを維持し、さらに向上させていきたいというねらいがあるからです。

もう一つの国際化のねらいは、濱田総長も就任当初から繰り返し述べている「タフな東大生をつくる」ことに資すると考えていることがあります。

キャンパス内に日本人とは異なるバックグラウンドを持った優秀な留学生をさらに増やすことで、日本人学生にもよい影響を与えたい。つまり、学内の国際化を通じて、よりタフで優秀な人材を育てたいという意図があるのです。

私たちがグローバル30の取り組みにおいて究極的な目標にしているのは、まさにこうした点にあります。

現状の2,500人超の規模を3,500人以上の規模に拡大

――グローバル30では外国人留学生受け入れの数値目標を求めています。どのような目標を掲げたのでしょうか。
田中 私たちがグローバル30を通じて行おうとしている取り組みは、量よりはむしろ質の確保に力点があるわけで、数を満たすことに固執するつもりはありません。2009年5月現在の数値ですが、東京大学にはすでに2,555人の外国人留学生が在籍していますが2020年度には、現状に1,000人を上乗せし3,500人規模にしたいと考えています。

そのためには、優秀な学生をどれだけ見出していけるか、また、そうした優秀な学生に東京大学で学びたいと思ってもらえるかが、まさに問われているわけで、東京大学を学ぶにふさわしい魅力的な大学にしていくこと、また、外国人が学びやすい受け入れ環境を充実させていくことが重要な課題になっています。

また、本学では現在、留学生の相当数が大学院に在籍しています。グローバル30により、英語のみで学位が取得できる大学院のコースは今後も増えていきます。英語のみで学位が取得できる学部のコースは2011年10月に設置予定ですが、本学としては初めてのケースとなりますので、留学生の受け入れ体制をさらに強化していきます。

中国と共に潜在的な人材の宝庫であるインド、ベトナムに注力し拡大を図る

――グローバル30において、東京大学は留学生の受け入れ重点国として、特にインド、ベトナムのアジア二カ国をあげ、これらの国々からの受け入れの環境整備を行っていくと聞いています。これは、どのような理由からでしょうか。

田中 インド、ベトナムの二カ国にとくに注力するのは、一つには高等教育が発展途上で、まだまだ高等教育が受けられない潜在的に優秀な人材の多い国々・地域に対して東京大学が貢献していくことが、「世界を担う知の拠点」としての使命であると考えているからです。これらの国は、潜在的にとてつもなく有能な人材がありながら日本を選んでいないという現状があります。

中国については、これまでも多くの留学生を受け入れており750人の中国人留学生が在籍しています。
これに対して、インド人留学生は現状わずか二四人にすぎません。私たちは、インドをこれまで日本の大学にあまり目を向けてくれなかった国の典型としてとらえており、今後はインドの優秀な若者が東京大学に目を向けてもらえるような取り組みを行っていきたいと考えています。

また、ベトナム人留学生は現在100人程度受け入れていますが、国の規模からしてもまだ十分な留学生数を受け入れているとは考えておりません。そういう意味で、同様にベトナムからの受け入れを増やしていくために受け入れ重点国の一つとして位置づけました。

同時に欧米からも優秀な学生、研究者を集めたいと考えています。東京大学には、欧米を相手にする一流の研究者がとてつもなく多くいます。欧米の大学とは日常的に連携や交流が行われています。こうしたつながりを活用し、強化しながら、さらに留学生の受け入れ拡大を図っていきたいと考えています。

東京大学ならではの研究領域に英語で学位取得できるコースを新設

――世界に伍して最先端の研究を行う東京大学での優秀な外国人留学生の受け入れとはどのようなものでしょうか。大学院レベルでは、どのような施策を推進していくのでしょうか。

田中 今回のグローバル30の取り組みの中核といえるかもしれませんが、英語のみによる授業で学位を取得できるコースを多数新設しようと考えています。たとえば、先ほど申し上げた、インド人学生が圧倒的に少ない理由として、東京大学において学位を取得するためには、日本語能力を相当の水準に高めなければならないことが挙げられます。同様に、欧米など世界各地から、さらに多くの有能な人材を集めるためにも、英語により学位が取れる環境を整備することが喫緊の課題であると認識しています。

大学院教育では、英語による学位取得が可能なコースとして、サステイナビリティ学教育プログラム、国際バイオエンジニアリング英語コース、国際農業開発学コースなど、社会科学から理工学、医学、農学など多岐にわたる一二のコースを順次開設していくことにしています。

東京大学は一流の研究者を擁する大学院大学ですから、大学院や研究所は世界トップレベルの国際化がより求められているのだと考えています。東京大学はあらゆる分野で世界一流の研究を行っているという自負を持っていますが、同等レベルにある世界トップの大学や研究所との競争に打ち勝ち優位性を発揮できるかが問題なのです。

そういう意味で、東京大学は優位性を発揮できる研究分野・領域、即ち最先端にある分野や日本ならではの独自性を持つ分野や領域の研究環境の整備に取り組む必要があります。

リベラル・アーツの伝統と共存する英語コースの新設で留学生に対応

――学士課程での外国人留学生の受け入れ環境の整備についてはどのようにお考えでしょうか。

田中 まず、教養学部前期課程に国際科類を新設して、日本や東アジアの社会の理解を深めるためのコースや、世界的な課題になっている環境・エネルギー問題などの理解を深めるための国際的かつ文理融合的な教養教育を行っていこうと考えています。

それに続く後期課程では、学際日本研究コースや環境・エネルギーコースを開設し、英語のみによる単位取得が可能な環境を整備していこうと考えています。

ただ、学部教育の国際化は、東京大学の伝統や制度の面で困難な取り組みで、どのような工夫を凝らすかが課題です。学部教育において英語による授業をどのように実現するかは最も頭を痛めた点でした。私たちは「レイト・スペシャリゼーション」と呼んでいますが、東京大学は早い段階で専門分野を決めず、入学から二年間はじっくりとリベラル・アーツを学ぶということを伝統とし特色としてきました。

グローバル30では四年間で学位(学士号)を取得できる英語コースの新設を求めていますが、これを従来の教養課程に導入しようとすると、教養教育のすべてを英語化しないといけないことになってしまいます。これは日本人学生の教育環境を考えると非現実なことであり、かつ本来の教育目的にもそぐわないことです。東京大学の教養課程の伝統とグローバル30をどのように共存させ、融合させるか、これが今後の課題となります。

東京大学で学ぼうという世界の若者は、東京大学や日本でしか学べない分野を指向している優秀な人材なのです。留学生の動機やモチベーションを十分に満たすことのできる環境を日本でつくりあげることが重要です。そのためにも奨学金の整備、住宅を含めた生活環境の整備、キャンパス内の国際化は必須です。研究・教育レベルの充実と共にこれらの環境整備にも最重点に取り組んでいこうと考えています。

田中明彦 Akihiko Tanaka

1977年東京大学教養学部卒業後、マサチューセッツ工科大学で博士号(政治学)取得。平和・安全保障研究所研究員、東京大学教養学部助手・助教授を経て90年に東京大学東洋文化研究所教授に就任。09年から同大学理事・副学長。07年から早稲田大学高等研究所諮問委員会委員、08年から日本国際政治学会理事長を兼任しているほか、政府の各種審議会、研究会に多数参加している。専門は国際政治学。

大学改革提言誌「Nasic Release」第20号
記事の内容は第20号(2010年2月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第20号・記事一覧

対談 大学国際化の現状と展望 (財団法人日本総合研究所会長 多摩大学学長 学生情報センターグループ特別顧問 寺島実郎  文部科学省高等教育局長 徳永 保)


創設時から脈々と続く「門戸開放」の精神で「世界のリーディング・ユニバーシティ」の実現を目指す (東北大学 総長 井上明久)


世界各国の有能な人材が集うことが「世界を担う知の拠点」である東京大学の使命 (東京大学理事・副学長 田中明彦)


「人間教育」と「環境」を掲げ上智らしさで「世界に並び立つ大学」を目指す (上智大学 学長 石澤良昭)


明治ならではの国際化戦略で21世紀を生き抜く強い明治に変革する (明治大学 学長 納谷廣美)


長期的戦略とAPUで培った実績を基盤とした立命館ならではの国際化戦略を推進する (立命館大学 学長 川口清史)


鼎談  地域における留学生受け入れの課題〜大学間連携と地域社会を巻き込んでの「国際化」を考える〜 (龍谷大学副学長 西垣泰幸氏  同志社大学副学長 黒木保博氏  京都大学理事・副学長 西村周三氏)


国際交流のプロ人材組織として幅広いネットワークを駆使し留学生30万人計画のハブとなる (特定非営利活動法人 国際教育交流協議会(JAFSA)常務理事早稲田大学 留学センター 調査役 高橋史郎)


レポート nasicのロゴが都大路を駆け抜けた「全国高等学校駅伝競走大会」レポート